「スポットワーク」における労働契約の成立時期と実務上の注意
近年、スマートフォンのアプリを通じて単発・短時間の仕事を請け負う「スポットワーク」が広がっています。厚生労働省は、このような雇用形態に関するトラブル防止のため、労働契約の考え方を示しました。そのポイントは、特に別段の取り決めがない限り、応募があった段階で労働契約は成立すると考えるべきという点です。
この見解を踏まえると、企業が「勤務開始前だからまだ契約は成立していない」と判断し、条件の変更や一方的なキャンセルを行うことは、契約違反とみなされる可能性があります。また、契約成立後に事業主側の都合で勤務を取り消した場合には、休業手当の支払い義務が発生するケースもあり得ます。
実務上の注意
・募集時点で業務内容や勤務時間、報酬などの条件を明確に提示しておくこと
・1日であっても労基法に則って「労働条件通知書」を交付すること
・応募の受付から契約成立までの流れを社内で統一し、従業員に説明できる体制を整えること
・やむを得ず勤務を中止する際は、休業手当の要否を慎重に判断すること
・応募や合意内容の記録を残し、後の紛争に備えること
スポットワークは柔軟な働き方を可能にする一方で、従来の雇用管理とは異なる配慮が求められます。労務担当者としては、契約成立のタイミングを正しく理解し、トラブル防止に努めることが重要です。