1. HOME
  2. ブログ
  3. 知識・情報
  4. 労働基準法関連
  5. 日本マクドナルド事件:1ヶ月変形労働時間制 無効(名古屋高判令5・6・22)

知識・情報

knowledge

労働基準法関連

日本マクドナルド事件:1ヶ月変形労働時間制 無効(名古屋高判令5・6・22)

         

労働基準法の「1か月単位の変形労働時間制」の運用にあたり、労働基準局長の通達が厳密に適用された結果となった、大変参考になる事案です。

1か月変形労働時間制を採用する場合は、従業員10人以上の企業であれば、就業規則への記載が必要になります。就業規則には、始業・終業時刻を記載することが必須であるため、1か月単位の変形労働時間を採用する場合でも、すべての勤務パターンを記載する必要があり、変形期間はその規定に書かれた勤務パターンを組み合わせ、運用していく必要があります。この日本マクドナルドの事案では、就業規則に規定がない、独自の勤務パターンで運用がなされており、1か月単位の変形労働時間が無効と判断された事案です。

実際、「勤務パターンが多すぎるから就業規則に書ききれない」と言う理由から、就業規則にすべての勤務パターンの始業・終業時刻を記載をしていない会社が散見されます。勤務パターンが多い場合でも、すべて記載しておく必要があり、記載していない勤務パターンでは働かせてはいけないということになります。

1か月単位の変形労働時間と、シフト制は、大変似ていますが異なる労働時間制度です。割増賃金に対する考え方も異なり、1か月単位の変形労働時間が無効と判断された場合には、割増賃金を過去にさかのぼり請求される可能性があります。1か月単位の変形労働時間制は、労働者にとっては大変負担が大きいため、労働者保護の観点から通達で厳密に運用方法が示されています。

今一度、就業規則の記載事項を確認の上、実際の勤務パターンが就業規則に盛り込まれているか確認をしましょう。あまりにも数が多い場合は別紙にまとめることも可能ですが、その別紙も合わせて就業規則となります。

【日本マクドナルド事件(名古屋高判令5・6・22)概要】
日本マクドナルドの店舗マネージャー(正社員・原告)に「1か月単位の変形労働時間制」が適用されていた。就業規則には、前月末までに勤務割を通知する旨記載されており、就業規則には原則のシフト4パターンのみ記載されていた。実際の店舗では、その4パターン以外の独自の勤務割が作られていた。原告は、独自の勤務割であるため、「1か月単位の変形労働時間制」の法的な要件を満たさないと主張。これに対し一審は、店舗数も864店舗あり就業規則にすべてパターンを記載することは不可能、各店舗に則した勤務シフトを事前に周知しているため、就業規則に基づき有効と判断。これに対し、控訴審では、労働基準局長の通達どおりの厳密な運用をしていないため、「1か月単位の変形労働時間制」は無効であると判断した。

【1カ月単位の変形労働時間制(厚労省)】
000948650

関連記事