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前借金相殺の禁止(労働基準法第17条)

         

労基法17条では、「前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない」と定めています。

1.前借金相殺の禁止とは
本条の規定は、金銭貸借関係と労働関係とを完全に分離し、金銭貸借関係に基づく身分的拘束関係の発生を防止するという趣旨で設けられています(昭63・3・14 基発150号)。
労働することを条件として労働者に金銭を貸し付け、賃金から一方的に天引きする形で返済させることによって、労働者の足留め策や強制労働の原因となるため、「前借金その他労働することを条件とする前貸の債権」と「賃金」を相殺することを禁止しています。
本条の「賃金」は、労基法11条の賃金ですので、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものです。
本条は、前借金そのものを禁止している訳ではなく、賃金と前借金の相殺について、使用者側で一方的に行うことを禁止しています。使用者からの貸付金は、労働者の自由意思に基づく相殺や別個の返済契約に従って返済してもらうことになります。なお、前借金により、返済完了まで労働することを義務付ける等、労働を強制することは、労基法5条(強制労働の禁止)に違反すると解されています。

2.前借金その他労働することを条件とする前貸の債権とは
「前借金」(ぜんしゃくきん)とは、労働契約の締結の際またはその後に、労働する(将来の賃金により弁済する)ことを条件として使用者から借り入れた金銭のことです。
「その他労働することを条件とする前貸の債権」は、前借金のほか前借金に追加して労働者や親権者などに渡される金銭で、前借金と同様、金銭貸借関係と労働関係が密接に関連し、身分的拘束を伴うものです。
労働者が使用者から人的信用に基づいて受ける金融・生活資金など、明らかに身分的拘束を受けないものは、本条の債権に該当しません(昭22・9・13 発基17号、昭33・2・13 基発90号)。

3.本条違反
本条に違反して、前貸しの債権と賃金を相殺した場合には、使用者は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます(労基法119条1号)。
また、本条の債権と賃金を相殺(賃金控除)した場合は、本条違反だけでなく、控除分の賃金未払いとなり、労基法24条(賃金の支払)違反が成立します。

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